暗号通貨「価値の移動と保蔵」(2019春号)

<はじめに>
人類は価値の経済的表象としてマネーを創造し、これを扱う手段として通貨を発明した。
現代におけるマネーは、モノの経済価値だけでなく、信用そのものによって創造される。一方通貨は、価値が化体した有体物として、特殊な形や材質を有する貝殻や石から始まり、その後希少性のある金属に変わり、中世末期のイタリアにおいて信用をベースにした紙幣が考案された。そして、現在、偽造も不正使用もできない、最も安全で使用方法や場所を問わない究極の通貨として、「Crypto Currency(暗号通貨)」が生まれた。
通貨の基本機能は「決済手段」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」の3 つであり、信用によって裏打ちされた債務として譲渡が可能である。人類の経済活動において、常に価値の移動と保蔵が必要であり、通貨はその主たる手段として中心的役割を担っている。
通貨は、①取引記録や残高を記帳し、その台帳を根拠として発行する方法(台帳方式)と、②台帳は持たず、金属や紙などに特殊な方法で偽造できないようにしたモノ(実体貨幣)を発行する方法(現金方式)があり、いずれの方法においても通貨の3つの基本機能を実現できる。
ところで、現代の経済活動においては、空間的または時間的な変化に伴い、通貨自体の表す価値を変化させることを必要とする場面が少しずつ増えている。例えば、地域通貨はある地域のみで有効であり、通貨に似た地域振興券には有効期限がある。シルビオ・ゲゼルによって考案された自由通貨※1(スタンプ通貨)も電
子マネーを用いることで実験的使用が始まっている。従来の通貨は、この現代の要求に十分に応えられるだろうか?
以下、通貨の3つの基本機能である、「価値の移動(決済手段)」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」のうち、現代の暗号通貨が担い得る役割について、特に、価値の移動と価値の保蔵の焦点を当てて、その上で価値そのものについて論じる。

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