Blockchainの真実と新しい暗号通貨 -前編-(2017夏号)

<はじめに>
筆者はかつて外資系トップコンサルティングファームの戦略コンサルタントとして、ICT 企業、機械製造会社、商社、製薬会社等に対するコンサルティングを行っていた。その後日本でも世界でも多くの人々に利用され、皆さんにとって不可欠のサービスとなったものも少なくない。その中に、1996 年大手運送会社と共同で日本で初めて実施した“宅配便時間指定サービス”や、これと連動した“配達前の一時預かりサービス”がある。これは発荷主と着荷主そして荷物情報を時間情報と合わせて管理するだけで、従来とは比較にならないほどの利便性をもたらした。いつ配達されるか分かるので着荷主は長時間待つ必要がなく確実に荷物を受け取れるようになる、と発着両荷主に大変好評で瞬く間に日本全国に広がった。筆者も効果を実証するため、1年間ドライバーを務めたが、担当地域での苦情は1 年間で1 件だけ、それも1 分弱お届け時刻を早めに間違えたことを冗談交じりにお話し頂いたのみであった。実はこのサービスは、お客様の利便性向上も大きな目的であったが、主たる目的は、不在時には訪問せず在宅時のみに配達する、という当たり前の事を行うことによるコストダウンであった。その結果、その後の20 年間で数兆円にのぼるコストダウン効果があり、全国の運送会社の利益増大に貢献し税収増効果があっただけでなく、配送料金の据え置きによって利用者にも利益還元されたものと自負している。しかしながら、国内総生産という観点から考えてみると、利便性が高まったので荷物量は増えたが、配達料金据え置きのため総生産拡大としては限定的であったと言わざるを得ず、無駄を排除することで莫大な経済効果があっただけに、何とも釈然としない気がする。不動産の値上がりだけで経済成長をうたっている国がある中、どちらが国民を豊かにしているのか、答えは明白である。アベノミクスも、経済成長だけを目標にすると、国民の豊かさを置いてきぼりにすることになりかねない、と危惧している。
ところで、この経済を測る最も重要な指標の一つが通貨である。通貨は信用によって裏打ちされた債務を譲渡可能にするものであり、残高を証明する取引記録、または、譲渡可能な証書によって表現される。例えば、法定通貨は各政府の信用を元に発行される譲渡可能な債権(政府にとっての債務)であり、貨幣(硬貨または紙幣)という通貨を実効あらしめる実体として提供される。長い歴史の中で、様々な通貨が試されてきた。通貨によって、表面価値、価値の裏付け、表現方法は異なるものの、現在通貨の基本機能は「決済手段」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」の3 つと言われている。最近では、「抽象的な価値単位」と「その存在と移転が認識できる仕組みが保証されているもの」と云うことが受け入れられるようになってきた。これは、情報こそが通貨の本質であると理解されはじめたと言えるし、その結果“仮想通貨”までも社会的に認知されつつある。

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