Blockchainの真実と新しい暗号通貨 -後編-(2017秋号)

<終わりの始まり>
前編でビットコインが通貨として不完全であること、そしてその技術基盤であるBlockchain についても公開鍵方式を応用しているがゆえに構造的脆弱性を内包していることを示した。実際Blockchain に関する数多くの事件は、Blockchain そのものではなく、その外部で起こっている。特に公開鍵をアカウント番号に見立てる仕組は、なりすましや情報改竄の直接の原因となっている。ビットコイン論文の著者(Satoshi Nakamoto)は取引の匿名性を保つため、できる限り頻繁にアカウント番号を変更すること推奨しているが、アカウント番号が都度変わるのではなりすましをし易くするだけであり、セキュリティの観点からはむしろ危険である。これだけでもとても実用に耐える仕組みでないことは明白だが、最近は絶対に安全だと考えられていたBlockchain そのものの構造的欠陥も指摘されはじめた。Blockchain の外部だけでなく内部も問題だというのである。実はBlockchain の仕組は取引記録の繋がりであるChain が分岐する可能性を持っており、事実、ビットコイン以外の用途で実用されていたBlockchain では過去に何度も分裂した例があるが、昨今、ビットコインのBlockchain でも分裂の危機が迫っていると言われている。ビットコインのBlockchainを構成するBlock には取引記録が書き込まれるが、過去においてはビットコインの取引数が比較的少なく、すべての取引記録を新たなBlock に書き込むことが可能であった。しかし、ビットコインの普及が進むにつれて取引数が増大したため、現在においては、すべての取引記録を書き込むにはBlock の大きさが小さ過ぎるという状況になっている。したがって、Block の大きさを拡大する等の新たなルール改正を近日中に行わなければ、ビットコインの仕組みが破綻しかねない状況になりつつある。実際、取引記録をBlockchain に追加される新規のBlock に書き込ませるための手数料が高くなりすぎて使いにくくなっており、手数料を少なくすると取引の完了までに数日間を要する事態となっている。ここで問題となるのが、新たなルール改正を行えるかということである。ブロックチェーンの仕組みでは中央集権的なルール決定者がいないことが利点と捉えられているが、中央集権的なルール決定者がいないということは、利害の対立するコミュニティ内でのルール改正のコンセンサスを得ることが極めて難しいということを意味する。コミュニティの参加者が満場一致で新たなルールを決定できなかった場合には、Blockchain は分裂してそれ以降は分岐した複数のBlockchain が独立して存在することになる。事実多くの専門家はビットコインのBlockchain の分裂※1 を予測している。このようなBlockchain の分裂は、ビットコインのBlockchain の場合のようにBlock の大きさの変更のみに起因して生じるのではなく、Blockchain を運用する場合における何らかのルール変更に起因して生じ得る。Blockchain の運用を続けると、どこかのタイミングで、システムの更新が必ず必要になる。つまりそのようなタイミングでBlockchain は分裂の危機を迎え得るのであるから、分裂はBlockchain が構造的に持つ不可避な問題であるということができる。中央集権的なルール決定者を設けることのできるプライベートBlockchain ならこの問題を極小化できると唱える専門家も存在するが、反中央集権を目的としてBlockchain を使うというのに、これでは本末転倒である。そもそも、データを改竄しないという点で信頼して中央集権体制を許容するのであれば、Blockchain を利用する意味がない。
Blockchain は、従来から指摘されていたBlockchain の外部の問題だけでなく、内部自体も構造的問題があることが徐々に認識され始めており、早急にBlockchain やそれを応用したビットコインの完全な代替技術を開発し普及することが望まれる。後述する通り、はるかにシンプルに、改竄のないデータベースを提供するという目的を達成することができる。

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