暗号通貨「価値の移動と保蔵」(2019春号)

<はじめに> 人類は価値の経済的表象としてマネーを創造し、これを扱う手段として通貨を発明した。 現代におけるマネーは、モノの経済価値だけでなく、信用そのものによって創造される。一方通貨は、価値が化体した有体物として、特殊な形や材質を有する貝殻や石から始まり、その後希少性のある金属に変わり、中世末期のイタリアにおいて信用をベースにした紙幣が考案された。そして、現在、偽造も不正使用もできない、最も安全で使用方法や場所を問わない究極の通貨として、「Crypto Currency(暗号通貨)」が生まれた。 通貨の基本機能は「決済手段」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」の3 つであり、信用によって裏打ちされた債務として譲渡が可能である。人類の経済活動において、常に価値の移動と保蔵が必要であり、通貨はその主たる手段として中心的役割を担っている。 通貨は、①取引記録や残高を記帳し、その台帳を根拠として発行する方法(台帳方式)と、②台帳は持たず、金属や紙などに特殊な方法で偽造できないようにしたモノ(実体貨幣)を発行する方法(現金方式)があり、いずれの方法においても通貨の3つの基本機能を実現できる。 ところで、現代の経済活動においては、空間的または時間的な変化に伴い、通貨自体の表す価値を変化させることを必要とする場面が少しずつ増えている。例えば、地域通貨はある地域のみで有効であり、通貨に似た地域振興券には有効期限がある。シルビオ・ゲゼルによって考案された自由通貨※1(スタンプ通貨)も電 子マネーを用いることで実験的使用が始まっている。従来の通貨は、この現代の要求に十分に応えられるだろうか? 以下、通貨の3つの基本機能である、「価値の移動(決済手段)」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」のうち、現代の暗号通貨が担い得る役割について、特に、価値の移動と価値の保蔵の焦点を当てて、その上で価値そのものについて論じる。 続きは資料をダウンロード 暗号通貨「価値の移動と保蔵」(2019春号)

安全な通貨交換業取引所を目指して(2018冬号)

<はじめに> 従来、事業資金の調達方法として、資産の売却、金融機関に依存する借入のほか、市場を利用する株式や債券の発行が行われてきた。これらの従来型の資金調達方法は、十分な資産や資本等に基づく信用のある企業にとっては有効な手段であったが、資産や信用のないスタートアップ企業にとっては有効な手段ではなかった。スタートアップ企業にとっては、エンジェルやベンチャーキャピタルによる出資等しか有効な手段がなかった。そればかりか、信用のある伝統的な企業にとっても、新規事業のための資金調達は簡単ではなかった。そこで近年注目を集めているのが、クラウドファンディングやICO(Initial Coin Offering)である。 クラウドファンディングは、特定の製品やサービスに対して一定額のターゲット金額を定めて資金提供者を募り、出資に対して予め約束したリターンを返す仕組である。一方、ICO はビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を用いて特定のコミュニティのための特別なトークン(通常ユーティリティトークン)を発行し、有償で譲渡することで資金調達を行う新しい仕組である。トークン自体はコミュニティにおいて自由に設計できるので、実際にコミュニティで使用されるトークンを発行すれば良いのだが、現実は資金調達のみを目的として発行され、実際の価値など何もない、いい加減なトークンが多いことも事実である。そのため今後は米国を中心として、SEC(証券取引委員会)の規制を受ける証券同様に、トークン設計や発行・販売にも厳密な手順が要求されるセキュリティトークンのみが認可されていく方向にある。そうなれば大きな金額を運用する機関投資家も参加でき、資金調達の新しい手段として大きく成長していくと考えられている。 仮想通貨を従来の法定通貨やほかの仮想通貨と交換する場所を、仮想通貨交換業取引所と呼び、取引所自体が保有する仮想通貨を販売するほか、第三者である譲渡者と譲受者をマッチングすることを業とする。日本では、最大のbitFlyer をはじめ、BITPoint やUOINEX など全16 社が登録されている(2018 年9 月現在)。ところが、これらの取引所の情報セキュリティ対策は、従来の証券取引所などと較べて十分とは言えず、監督官庁からの指導を受けるなど大幅な改善が求められている。今のままでは、将来のセキュリティトークンを扱うのは問題外であり、セキュリティトークン成長の大きな妨げとなることであろう。 従来の仮想通貨の基本的技術であるブロックチェーン自体にセキュリティ上の脆弱性があり、また即時決済ができないなどの問題があることは機関誌2018 年秋号ですでに指摘した通りであるが、ここでは仮想通貨の交換を行う取引所のセキュリティに焦点を絞り考察する。 続きは資料をダウンロード 安全な通貨交換業取引所を目指して(2018冬号)

ブロックチェーンを超えて 貨幣の進化 (2018秋号)

<はじめに> 古来人類は、「決済手段」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」の3 つの機能を持つ貨幣を発明することで、部族を超えて、大陸を超えて、巨大な経済を発展させてきた。美しい貝殻を、巨石を、貴金属を媒体とし、近代においては信用を礎とした持ち運びにも便利な紙幣を発行した。偽造貨幣の弊害が広く認知される中、いよいよその最終形といわれる暗号貨幣がその片鱗を現しつつある。 1960 年代に発明されたインターネットは、1990 年代に商用利用可能となり、1993 年にWorld Wide Web (WWW)と最初のブラウザーであるMosaic※2 の利用が解放された。続く1995 年に世界中で最も多くの人々が使用するMS-DOS がWindows95 にアップグレードされると、インターネット上での商取引が爆発的に増加することを見越した多くの先駆者たちが、今度はインターネットで使用できる貨幣(価値を持つ疑似有体物としてのデータ)の発明に乗り出した。1995 年までには百を超える新しいアイデアが紹介され、そして事業化された。しかし新しい世紀を迎えることができた事業は1 つもなかった。まだ貨幣を作れるほど暗号技術は成熟していなかったのである。人類は真の暗号貨幣の出現のために、暗号技術の完成を待つこととなった。 20 世紀最後の年、すでに脆弱性が見過ごせないレベルに達した暗号技術の新しい標準※3 が決められたが、それでも暗号貨幣を創造できるレベルには届かなかった。ところが、2009 年、人類への寄与などとは全く異なる目的のために、90 年代の技術を使い、従って大きな脆弱性を包含する前近代的な実験的試みが紹介された。 貨幣自体を創造することを放棄し、プライドの高い90 年代の研究者にとってはタブーとされた台帳方式と いう苦肉の策を用いた。これがブロックチェーンを用いるビットコインであり、一般には暗号貨幣ではなく暗号通貨の変種と考えられている。古典的な貨幣はその交換と同時に決済を完結する。いちいち記帳の必要はない。一方ビットコインは記帳した台帳の正確性にその価値が依存する。したがってこの台帳をいかに正確に記帳・保持するかだけが重要で、正確な台帳維持のためには、即時決済は犠牲にされ、一旦終了した決済自体が覆されることもある。このように不完全な仕組ながら暗号通貨を全世界に知らしめた功績は大きかったが、2017 年8 月に筆者がサンフランシスコにて行ったブロックチェーン崩壊の講演から間もなく、翌月の中国をはじめとして各国がビットコインを禁止することで、壮大な実験は終焉を迎えた。 続きは資料をダウンロード  ブロックチェーンを超えて 貨幣の進化 (2018秋号)

量子コンピュータ時代の暗号技術 量子暗号の限界と今後の対策(2018夏号)

<はじめに> 近年、量子コンピュータ※1 の開発が進む中、既存暗号技術の限界が議論され始めた。きっかけは、1994 年、米国ベル研究所のピーター・ショア博士(Peter Williston Shor, 1959 – )によって、量子コンピュータを使用する素因数分解を実用的な時間で計算できるアルゴリズムの発表だった。これを用いると、原理的には数回から数千回程度の計算で素因数分解が可能となる。つまり、「量子コンピュータが実現すると、現在の暗号はすべて破られてしまう」というのである。 2030 年頃には量子コンピュータが普及すると考えられており、2015 年 8 月、米国国家安全保障局(NSA)は、過去10 年以上にわたって推奨してきたAES、SHA-256 を含む暗号技術が、もはや安全ではないと宣言した。また、2016 年2 月、重要データを扱う企業や、政府各部門に対して、「量子コンピューティングの分野で研究が深まっており、NSA がすぐ行動を起こさなくてはいけないほどの進歩になっている」と、量子コンピューティングの脅威に関する詳細を発表した。 すでにNSA は、米国国立標準技術研究所(NIST)と共同で、量子コンピュータ時代以後にも使える耐量子コンピュータ暗号のいくつかの新しい標準アルゴリズムに取り組んでおり、新たなアルゴリズムの募集を行っている。欧州連合やそのほかの国でも、耐量子コンピュータ暗号や量子暗号についての取り組みが行われはじめている。 わが国でも、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、格子理論に基づく新暗号方式「LOTUS」を開発したと発表した。NICT サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室が開発したもので、量子コンピュータでも解読が難しい、耐量子コンピュータ暗号として開発された暗号化方式であり、公開鍵方式として現在広く使われているRSA 暗号や楕円曲線暗号は、ピーター・ショア博士のアルゴリズムを使うことで、簡単に解読できることが数学的に証明されているが、格子理論ではまだそのような効率的に解くアルゴリズムが見つかっていない。今回のLOTUS は、NIST の耐量子コンピュータ暗号において、2017 年12 月に書類選考を通過した69 件の候補の1 つに残っており、今後数年かけて各候補の評価と選定が行なわれる予定である。そのほか、KDDI …

遠隔認証(Remote Synchronization)を実現する 可変型マイナンバーも可能に(2018春号)

<はじめに> 前誌において、サイバーセキュリティの本質を探り、そのソリューションの提案を行った。完全な情報セキュリティ対策に必要なのは、①適切な情報生成者と使用者をシンクロさせること(遠隔同期、Remote Synchronization)と、②両者間で用いる完全暗号(Complete Cipher)であり、その結果、エンド・トゥ・エンドプロテクションが可能になり、後に説明する情報処理プロセスを透明化するコンピュータアーキテクチャを採用する機器と併せて使用すれば、現在の情報セキュリティ上のほとんどの問題を解決できる。 次表は情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10 大脅威 2017」 (https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2017.html)である。実際、個人に対するものとしてあげられている脅威のうち、インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用(1 位)、ウェブサービスへの不正ログイン(4 位)、ウェブサービスからの個人情報の窃取(6 位)、IoT 機器の不適切な管理(10位)は直接的に、ランサムウェアによる被害(2 位)、スマートフォンやスマートフォンアプリを狙った攻撃(3 位)、ワンクリック請求等の不当請求(5 位)、インターネット上のサービスを悪用した攻撃(9 位)は組合せで防ぐことができる。また、組織に対するものとしてあげられている脅威のうち、ウェブサービスからの個人情報の窃取(3 位)、内部不正による情報漏えいとそれに伴う業務停止(5 位)、ウェブサイトの改ざん(6 位)、ウェブサービスへの不正ログイン(7 位)、IoT 機器の脆弱性の顕在化(8 位)、インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用(10 位)は直接的に、標的型攻撃による情報流出(1 位)、ランサムウェアによる被害(2 位)は組合せで防御できる。尚、サービス妨害攻撃によるサービスの停止(4 位)は従来技術で解決でき、また残りの、組織の攻撃のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)(9 位)と個人のネット上の誹謗・中傷(7 位)及び情報モラル欠如に伴う犯罪の低年齢化(8 位)は人的問題である。 前述の“情報処理プロセスを透明化するコンピュータアーキテクチャを採用する機器”とは、すべての作業プロセスが見えるコンピュータ(プロセス透明化コンピュータ)である。これまでコンピュータは複雑化の一途をたどってきた。個人用のパーソナルコンピュータでさえ、文字だけでなく画像や動画も扱えるようになり、今では一部初歩的な人工知能技術を搭載しているものもある。搭載されるアプリケーション1 …

情報セキュリティの本質と対策 情報セキュリティ上の脅威・攻撃に対する実用的ソリューション (インテリジェンスレポート4月号)

平成29 年12 月3 日、日本経済新聞の一面に「中央省庁サイト、8 割にリスク 改ざん・なりすまし・盗み見・・・暗号化、人手や予算乏しく」という見出しの記事が掲載された。8 割の中央省庁サイトで、暗号化の遅れや人手不足のためセキュリティ・リスクを抱えているというのである。情報漏洩(盗み見)一つとっても、1 月にコインチェック社から580 億円分の仮想通貨が盗まれたという事件があった。セキュリティ対策の杜撰さが指摘されているが、十分なセキュリティ対策をしている企業でも情報漏洩事件を起こしている。 2011 年の4 月から6 月にかけて、ソニーグループ全体で1 億261 万3000 件の情報漏洩事件があった。その前年に、筆者等は同社の法務関係者に完全な技術の採用を提案したが、自社技術で十分との回答であった。しかし漏洩事件後、自社技術により様々な対策を施したにもかかわらず、2014 年11 月に、グループ会社のソニー・ピクチャーズから再び4 万7,000 人分合計100TB 超の可能性のある個人情報漏洩が発生した。この他にも、2015 年5 月の日本年金機構における125 万件の個人情報漏洩事件や、2015 年11 月三菱東京UFJ 銀行の出会い系サイトの運営事業者の振込情報約1 万4,000 件の外部流出事件など、セキュリティ対策を万全に行っているはずの事業者の漏洩事件は世間に衝撃を与えた。これらはすべて不正アクセスによるものである。 2014 年7 …

サイバーセキュリティの本質を探る ピア・トゥ・ピアの衝撃(2017冬号)

<はじめに> ネットワーク上の盗難被害額が2009年当時全世界で1 兆ドルにもなることを以前書かせていただいたが、クレジットカード被害額はさらに2 兆ドルにのぼると言われている。日本クレジット協会によると日本でも今年1~6月の被害額は118億2千万円(前年同期比で45億5千万円増)と言う※1。世界中セキュリティに莫大な費用をかけ対策を行っているというのに一体どういう事であろうか? 筆者はインターネットがほぼ完成した1980 年代の終わりに渡米し、広く普及する直前期に開発が目の前で行われていく様子を見させていただいた。最初は全米で使われていたIBMのコンピュータとMIT(マサチューセッツ工科大学)の地下室でケン・オルセン等によって開発されミニコンピュータのスタンダードであったDECのコンピュータの間でさえデータを移動させるのは面倒で、再度キーボードで打ち込まなければならなかったものを、互いに理解できるプロトコルを採用することで、互いがつながるようになった。特に、MITの同窓会会長を一時期務めたロバート・メランクトン・メトカーフ(Robert Melancton Metcalfe)等によるイーサネットや、ヴィントン・グレイ・サーフ(Vinton Gray Cerf)等によるTCP/IPプロトコルの発明を経て、1983年頃からネットワーク同士がつながるインターネット上でもコンピュータ同士が通信できるようになった。しかしながら当時は暗号技術も完成しておらず、セキュリティに不安を残したままで世界中に普及することとなった。それでもその後ハイパーテキスト転送プロトコル (HTTP、Hypertext Transfer Protocol)やWEBブラウザが導入されると、一般の人々まで広く使われるようになった。さらに1994年の筆者等のASP(Application Service Provider)の考案に端を発するクラウドコンピューティングが普及し、そのキラーデバイスとしてスマートフォンが登場するとこの流れは決定的となった。今でもセキュリティに関する不安を口にする人は多いが、圧倒的な利便性の前に根本的な解決を待つまでもなく、インターネットなしではビジネスはおろか生活さえできないという人まで現れ始めている。 それ故に上記の数兆ドルという損害はまだまだ拡大すると考えられるが、本当に根本的対策はなく、必要コストとして社会が負担し続けなければならないものなのであろうか? 続きは資料をダウンロード サイバーセキュリティの本質を探る ピア・トゥ・ピアの衝撃(2017冬号)

Blockchainの真実と新しい暗号通貨 -後編-(2017秋号)

<終わりの始まり> 前編でビットコインが通貨として不完全であること、そしてその技術基盤であるBlockchain についても公開鍵方式を応用しているがゆえに構造的脆弱性を内包していることを示した。実際Blockchain に関する数多くの事件は、Blockchain そのものではなく、その外部で起こっている。特に公開鍵をアカウント番号に見立てる仕組は、なりすましや情報改竄の直接の原因となっている。ビットコイン論文の著者(Satoshi Nakamoto)は取引の匿名性を保つため、できる限り頻繁にアカウント番号を変更すること推奨しているが、アカウント番号が都度変わるのではなりすましをし易くするだけであり、セキュリティの観点からはむしろ危険である。これだけでもとても実用に耐える仕組みでないことは明白だが、最近は絶対に安全だと考えられていたBlockchain そのものの構造的欠陥も指摘されはじめた。Blockchain の外部だけでなく内部も問題だというのである。実はBlockchain の仕組は取引記録の繋がりであるChain が分岐する可能性を持っており、事実、ビットコイン以外の用途で実用されていたBlockchain では過去に何度も分裂した例があるが、昨今、ビットコインのBlockchain でも分裂の危機が迫っていると言われている。ビットコインのBlockchainを構成するBlock には取引記録が書き込まれるが、過去においてはビットコインの取引数が比較的少なく、すべての取引記録を新たなBlock に書き込むことが可能であった。しかし、ビットコインの普及が進むにつれて取引数が増大したため、現在においては、すべての取引記録を書き込むにはBlock の大きさが小さ過ぎるという状況になっている。したがって、Block の大きさを拡大する等の新たなルール改正を近日中に行わなければ、ビットコインの仕組みが破綻しかねない状況になりつつある。実際、取引記録をBlockchain に追加される新規のBlock に書き込ませるための手数料が高くなりすぎて使いにくくなっており、手数料を少なくすると取引の完了までに数日間を要する事態となっている。ここで問題となるのが、新たなルール改正を行えるかということである。ブロックチェーンの仕組みでは中央集権的なルール決定者がいないことが利点と捉えられているが、中央集権的なルール決定者がいないということは、利害の対立するコミュニティ内でのルール改正のコンセンサスを得ることが極めて難しいということを意味する。コミュニティの参加者が満場一致で新たなルールを決定できなかった場合には、Blockchain は分裂してそれ以降は分岐した複数のBlockchain が独立して存在することになる。事実多くの専門家はビットコインのBlockchain の分裂※1 を予測している。このようなBlockchain の分裂は、ビットコインのBlockchain の場合のようにBlock の大きさの変更のみに起因して生じるのではなく、Blockchain を運用する場合における何らかのルール変更に起因して生じ得る。Blockchain の運用を続けると、どこかのタイミングで、システムの更新が必ず必要になる。つまりそのようなタイミングでBlockchain は分裂の危機を迎え得るのであるから、分裂はBlockchain が構造的に持つ不可避な問題であるということができる。中央集権的なルール決定者を設けることのできるプライベートBlockchain ならこの問題を極小化できると唱える専門家も存在するが、反中央集権を目的としてBlockchain …

Blockchainの真実と新しい暗号通貨 -前編-(2017夏号)

<はじめに> 筆者はかつて外資系トップコンサルティングファームの戦略コンサルタントとして、ICT 企業、機械製造会社、商社、製薬会社等に対するコンサルティングを行っていた。その後日本でも世界でも多くの人々に利用され、皆さんにとって不可欠のサービスとなったものも少なくない。その中に、1996 年大手運送会社と共同で日本で初めて実施した“宅配便時間指定サービス”や、これと連動した“配達前の一時預かりサービス”がある。これは発荷主と着荷主そして荷物情報を時間情報と合わせて管理するだけで、従来とは比較にならないほどの利便性をもたらした。いつ配達されるか分かるので着荷主は長時間待つ必要がなく確実に荷物を受け取れるようになる、と発着両荷主に大変好評で瞬く間に日本全国に広がった。筆者も効果を実証するため、1年間ドライバーを務めたが、担当地域での苦情は1 年間で1 件だけ、それも1 分弱お届け時刻を早めに間違えたことを冗談交じりにお話し頂いたのみであった。実はこのサービスは、お客様の利便性向上も大きな目的であったが、主たる目的は、不在時には訪問せず在宅時のみに配達する、という当たり前の事を行うことによるコストダウンであった。その結果、その後の20 年間で数兆円にのぼるコストダウン効果があり、全国の運送会社の利益増大に貢献し税収増効果があっただけでなく、配送料金の据え置きによって利用者にも利益還元されたものと自負している。しかしながら、国内総生産という観点から考えてみると、利便性が高まったので荷物量は増えたが、配達料金据え置きのため総生産拡大としては限定的であったと言わざるを得ず、無駄を排除することで莫大な経済効果があっただけに、何とも釈然としない気がする。不動産の値上がりだけで経済成長をうたっている国がある中、どちらが国民を豊かにしているのか、答えは明白である。アベノミクスも、経済成長だけを目標にすると、国民の豊かさを置いてきぼりにすることになりかねない、と危惧している。 ところで、この経済を測る最も重要な指標の一つが通貨である。通貨は信用によって裏打ちされた債務を譲渡可能にするものであり、残高を証明する取引記録、または、譲渡可能な証書によって表現される。例えば、法定通貨は各政府の信用を元に発行される譲渡可能な債権(政府にとっての債務)であり、貨幣(硬貨または紙幣)という通貨を実効あらしめる実体として提供される。長い歴史の中で、様々な通貨が試されてきた。通貨によって、表面価値、価値の裏付け、表現方法は異なるものの、現在通貨の基本機能は「決済手段」、「価値の保蔵手段」、「価値尺度」の3 つと言われている。最近では、「抽象的な価値単位」と「その存在と移転が認識できる仕組みが保証されているもの」と云うことが受け入れられるようになってきた。これは、情報こそが通貨の本質であると理解されはじめたと言えるし、その結果“仮想通貨”までも社会的に認知されつつある。 続きは資料をダウンロード Blockchainの真実と新しい暗号通貨 -前編-(2017夏号)

国家安全保障のための企業サイバーセキュリティ対策(2017春号)

<はじめに> 昨今、日本でもサイバー犯罪が報道されることが多くなり、事の重大さが認識されてきた。警察庁においてもサイバー対策を重視し、各都道府県警ではサイバー対策課を設けて対策にあたるなど、サイバー犯罪への対策が緊急課題となっている。サイバー犯罪とは、主にコンピュータネットワーク上で行われる犯罪の総称であり、ネットワーク上の不法取引やデータの大量配布による著作権侵害、法律に違反するデータの公開などを主として指すが、特に、産業情報の漏えいは、直接的に国力低下の原因につながる国家安全保障上の重要問題である。一つの工業製品を発売するため日本を含む先進国では、基礎研究から始まり、その応用研究、これらを利用した製品開発(設計図を含む)、製造技術開発(金型や製造ラインなど)に膨大な費用をかけている。これらの費用は、原則としてすべて新製品の付加価値を構成し、最終製品の発売にあたっては、その製品本来の製造コストに加えて、この研究開発に要するコストを上乗せして、新製品の価格が決定されている。そして従来はこの新製品が有する新規性、独自性、利便性ゆえに、類似の従来製品と比較して高価格であっても価格競争力を維持してきた。ところが近年、新製品と同じ付加価値を持つほぼ同等の製品が、発売日までほぼ同じ日に市場に出てくるという不可解な事態が発生するようになっている。そのため我が国の製造業者は、研究開発にかけた膨大なコストを乗せた分だけ価格が高い新製品を市場に供給することを余儀なくされ、いつの間にか日本の経済力は、世界第二位の地位までも奪われるに至ってしまった。その結果、①競争力の低下とシェアの縮小、②技術力が高価格につながらないことによる研究開発費の圧縮、③日本人技術者の減少および技術力の低下、と負の連鎖さえ見られる。「世界の工場」と称される国々と比べても、日本のほうが製造効率は数倍高いので、製造コストについて日本の競争力が勝っているケースは少なくない。それに加えて、開発コストを適切に上乗せできるのであれば、日本の競争力は以前よりも高くなり得ると言っても良い。しかし、そこでは産業情報の漏えいを防止する情報セキュリティ対策が不可欠である。 このため、情報セキュリティ対策に注力する日本企業は増加し、危機意識も高まってきている。しかしながら、欧米諸国と比較しても、我が国の企業の対応はまだまだ不十分だと言わざるを得ない。これには、セキュリティ・リスクに関する考えが不十分であったこともあるが、次のような事情も見逃せない。 日本国内の多くのコンピュータ環境は日本語であるため、数年前までは海外からのサイバー攻撃を受けることが少なかった。ところが、コンピュータによる自動翻訳が容易になり、また世界共通のソフトウエアも増えたので、日本へのサイバー攻撃は飛躍的に増加してきた。また競合企業を標的とした業務妨害目的の単純な攻撃も急増している。 当情報セキュリティ研究所は、「情報セキュリティ対策は、最高度の技術的能力をもって、現段階の技術に関する冷徹かつ的確な判断のうえに構築するべきもの」との認識のもと、サイバー犯罪のパターンや技術的背景を踏まえた「現実的な答え」を提案したいと考えている。 尚、所⾧の中村は情報セキュリティの根幹に関わる暗号技術を専門とし、副所⾧の武田はネットワークセキュリティの専門家として情報セキュリティの最前線で活動している。 本稿では、その概要を今後の活動予定とともに紹介する。 続きは資料をダウンロード 国家安全保障のための企業サイバーセキュリティ対策(2017春号)